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研究内容
 情報フォトニクスは、光を中心にディジタル技術、信号処理、画像処理,物理工学を統合した分野で、光の精密・高速特性とディジタル技術の柔軟性を組み合わせて,情報処理や高精度計測を行います.
 光は波動の性質を持ち,微小領域に集光させることができます.この特性を利用すると微小領域の情報を獲得することができます.一方,拡大することも可能であり広範囲の情報も獲得することができます.また光波で空間情報に生成することによりVR/ARへの応用ができます.これらの技術は、リアルで立体的な映像情報の生成、生体イメージング,リモートセンシング,精密計測などを実現し,製造、医療,エンターテインメントなど多岐にわたる分野での応用が期待されています.

三次元情報のリアルタイム記録・再生法

 人間の動作解析や移動物体の精密計測に応用するための三次元情報の記録と再生をリアルタイムで行う計測システムについて研究します.
 物体情報の記録に用いられる撮像素子は二次元であるため、三次元情報は簡単に獲得することはできません.その情報量も莫大であるため、現在のコンピュータでもたいへんな作業になります.
 本研究では,三次元情報の記録と再生の処理を光領域で行うことにより,空間展開された並列処理により高速化を実現します.記録処理では、構造化パターン投影やマルチカメラを利用して物体の三次元情報を抽出します.再生処理においては、CGによるイメージ表示やリアルタイム再生を実現します.

高密度ポイントクラウドで
表現された招き猫


ディジタルホログラフィ

 ホログラフィとは,伝播してくる光波そのものを干渉現象を利用して記録する技術です.記録された媒体をホログラムといいます.ディジタルカメラを用いて電子的に記録するホログラフィをディジタルホログラフィ(DH)といいます.DHでは、光の強度(=振幅の2乗)と位相を定量的に扱うことができるようになります.位相情報は,奥行き情報や透明物体の屈折率に大きく関係しています.
(※通常の写真技術において,物体は2次元情報で記録されるため奥行き情報は得られません.また,透明な物体を撮影することはできません.透明な物体は固有の屈折率を持っていますので,この屈折率を記録できれば透明な物体の情報を知ることができます)
 本研究では,デジタル処理の柔軟性と光波の多様性を利用するDHを用いた新しいイメージング技術,DHの新しい記録方法や数値再生アルゴリズムを開発しています.生体や微生物などの位相情報による観察、微小変位・変形計測などのセンシング応用、複素振幅を利用した計算原理などを研究しています.

カラーディジタルホログラフィによる
正確な色再現と三次元形状の獲得


立体ディスプレイ

 三次元物体を表示させる方法としてホログラフィ方式があります.ホログラフィは光波そのものを記録・再生する技術なので,ホログラムを再生すると物体から伝播してきた光を正確に再現することができます.その光を人間が見ると,あたかも物体がそこにあるように自然な立体像が見えます.ホログラフィは究極の立体ディスプレイ技術と言われています.
(※右眼と左眼のための2枚の画像を用いるステレオ方式がありますが,見る位置が変わると不自然になったり,目の疲労を感じるなどの問題があります.これは人間の視覚特性に適していない立体像をつくっているからです)
 電子的な表示デバイスでホログラムを表示して再生処理を行う方法は電子ホログラフィ技術と呼ばれています.ホログラムを表示するためのデバイスは空間光変調器(SLM)と呼ばれています.コンピュータで干渉現象をシミュレートすれば数値的にホログラムをつくることができます.この方法を用いると実際に存在しない物体を立体表示することができます.例えば3D-CGで表現されたキャラクターを立体的に表現することができます.
 数値計算でホログラム情報をつくる技術は計算機合成ホログラム(CGH)と呼ばれています.像の形成は空間展開された並列計算に相当するため,ホログラム作成のためには大量の計算が必要です.そのため設計アルゴリズムの開発や並列処理の導入が重要になります.最近では深層学習を利用したAIによる設計法の研究が始っています.


反射型空間光変調器を用いた
ホログラフィックディスプレイ



透過型空間光変調器を用いた
ホログラフィックディスプレイ

散乱イメージング

 人間の体は散乱体です.カメラは人体の外部を撮影できますが,内部情報を撮影することはできません.これは物体内部から伝搬してきた散乱光を結像することができないからです.しかし,この散乱光は物体の情報を保持しているはずです.この情報をコンピュータで再構成することが可能ならば物体情報を得ることができます.
 本研究では,AI技術や数理最適化法を使って散乱光から物体情報を復元・抽出する技術を研究します.この技術は散乱イメージングという研究分野に属します.
 人間の皮膚は散乱体であり,皮膚下の内部構造を観察することは簡単にはできませんが,散乱イメージングを用いれば非侵襲で体内の情報を得ることができます.他にも,交差点において見通しのきかない位置に存在する歩行者を検出するために散乱イメージングを用いて可視化を行う応用があります.






入力パターン(上段)の散乱画像(中段)から復元されたパターン(下段)

ホログラフィ技術を用いた光情報処理

 光渦とよばれる現象が注目されています.これはらせん形状をした位相をもつ光のことであり、回転の中心の強度がゼロになりドーナッツ形状のビームパターンを形成します.光渦は軌道角運動量という新しいパラメータをもっています.例えば、右回りと左回りの光渦を作ることができます.さらに回転数を増やすこともできます.回転数と方向により正負の符号をつくったり、また位相の回転を複素数にそのまま割り当てることが考えられており、現在のデジタルコンピュータにおける二進符号とは異なる多値信号による新しい情報処理が期待されています.
 光の渦は計算機ホログラム(CGH)を用いて人工的につくることができます.CGHはコンピュータで光の伝播をシミュレートしてつくったホログラムのことで物理的には存在しない光波でもつくることができます.図は光渦をもつビームの位相が伝播とともに回転している様子を表しています.赤が位相0、青が位相2πとなっています.次に表示される二つのラインは光波の実部成分と虚部成分がゼロになる位置を表しています.中心が唯一交差する位置であり振幅がゼロになる光渦が発生していることがわかります.


光計測と情報処理

光には、波長、偏光、振幅、位相、干渉性などのさまざまな制御パラメータをもつことができます.特にレーザーを光源を用いると干渉性というパラメータを利用することができます.本研究では、これらのパラメータを利用して対象物体から有用な三次元情報を抽出したり、物体認識、位置検出などを行う光を用いた特異な情報処理に関して研究します.


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