ユビキタスネットワーク社会における
バイオメトリクスセキュリティ研究会(第3回)
講演6
DWT領域オンライン署名照合における多重照合に関する研究
鳥取大学地域学部
中西 功氏
情報セキュリティ技術の重要性が高まるにつれ、バイオメトリクスを用いた認証技術が注目を集めている。しかしながら現状での識別性能の信頼性が十分ではな
く、大規模ユーザーの処理能力にも欠けるといった実用上の問題も指摘されている。これらの問題を克服する方法として、マルチバイオメトリクス技術が着目さ
れているが、個々のデータや機器の不備・故障などによる識別性能の低下を、他のバイオメトリクスやデータで補うことで、識別性能の向上を目指すものであ
る。
マルチバイオメトリクスの実現手法としては以下の5つが考えられる。
1、マルチモーダル・バイオメトリクス
2、マルチサンプル・バイオメトリクス
3、マルチマッチャー・バイオメトリクス
4、マルチユニット・バイオメトリクス
5、マルチセンサー・バイオメトリクス
なお、コスト面で最も効果的手法は、単一バイオメトリクスの単一データから複数の特徴を抽出・照合する「マルチマッチャー・バイオメトリクス」とされる。
また、マルチバイオメトリクスにおける融合は以下の4つのレベルで実施。
@・特徴抽出(センサーレベル)/A照合スコア(メジャメント)レベル/Bランクレベル/C決定(アブストラクト)レベル
中でも照合スコアレベルでの融合は、異なる確度情報を統合することでより正確な判定が実現できる。
我々はオンライン署名を用いた本人識別方法について研究しているが、署名のオンライン情報抽出を市販のペンタブレット装置などだけでなく、PDAなどの
携帯型端末においても実現できることを想定して、ペンの位置情報だけを用いている。しかし、署名の形状が他人に知られた場合、位置情報は詐称されやすいこ
とから、例え詐称されてもそれを見破る方策が必要になる。本人と詐称者の違いを顕著にするために、離散ウェーブレット変換(DWT)によるサブバンド分解
を導入することにより、本人と詐称者の違いが明らかになり、従来と比べて識別率も10%程度向上した。
しかしながら提案照合システムの識別率は現状で約95%であり、更なる識別率の向上が望まれる。
今回の研究では各座標値さらには各サブメントの識別結果を融合する際の融合比を、ユーザー(署名)毎に最適なものとすることで識別率の向上が可能であるこ
とを示された。さらに、これまでの位置パラメータだけでなく、新たに移動角度パラメータを導入し、融合することで識別率の向上が可能である。移動角度パラ
メータの場合は本人内変動が大きいため、局所平均信号を抽出し、識別を行うことが効果的である。
(2004年11月25日号より)
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